チェコで1850年頃から作られている動物のかたちなどを象ったパン細工。
小さな町のパン職人によって生みだされた愛らしく詩的なフィギュアたちは、子どもたちの玩具として買われ、のちにクリスマスやイースターの装飾に使われるようになりました。
ハサミやナイフなどで見事に細工された毛並みやウロコ、植物の種子でできたつぶらな瞳。カレル・ゼマンの世界に登場しそうな、中世ヨーロッパの幻想的でちょっぴりユーモラスな雰囲気を漂わせ、なんともふしぎな魅力を放つ動物たち。手に取るとなんともいえない温もりが伝わってきます。
材料は、小麦粉と水と酢のみ。(届いた荷物を開けると、ほのかに酸っぱい匂いするのですが、毎年この匂いを嗅ぐと今年もクリスマスがやってくるんだなあと何とも言えない幸せを感じます。)発酵させず、低温で長時間焼くことによって水分をとばし、長期保存できるようにつくられています。
パン細工のモチーフに使われるのは基本的に34種類と決まっており、伝統的なルールを守りながら(勝手にモチーフを増やさない、色をつけないなど)作られているそうです。
リスは良い奥さん、魚は寡黙、カエルはきれいな水、ハトは家族の平和、ザリガニは母(妊婦を守る)、子羊は善、野ウサギは洞察力、フクロウは英知、アヒルは良母、クジャクは富をもたらし、太陽は生命を与える、といったように
それぞれのモチーフには意味があり象徴になっているのだそう。(一部象徴するものがないものもあります)
もともと、なにかモノを象った象形パンは人の心の内をあらわしたもので、古代からさまざまな儀式につかわれてきた歴史があります。
ただ可愛いだけじゃない、寓意的な意味をもつパン細工、チェコのすばらしい民俗芸術をご紹介いたします。
|